しかしその後、師父のヤツに対する態度に 大きな変化が現れた。
あの検事を信頼し始めたようだ。
更には、ヤツを見つめる あの眼差しは‥‥‥
私が、黒いグラスの下から師父を見つめている時のそれと 全く同じだ‥‥‥
帰りの飛行機の中で、物思いに耽ったり しきりに溜息をつく師父を、他の同僚達は とても気遣った。
第1秘書の裏切りで、師父が傷付いているものと勘違いしたらしい。
そして本国に戻ってからも、師父の様子は一向に変わらなかった。
たった数日捜査を共にしただけで、師父の心をあそこまで虜にした あの男を憎いと思う反面、羨ましいと妬む気持ちも湧き上がる‥‥
「おい。出し物は決まったか?」
不要になった書類をシュレッターに掛けていると、先輩が声を掛けてきた。
「出し物?何ですか?」
怪訝そうな顔をして聞き返すと、先輩は「やっぱりな」と両肩を竦めた。
「来週の研修旅行だよ。夜の宴会の時に、新人は余興で出し物をしろって言ってただろ。
他の奴等は寸劇とか踊りとか、色々準備してたぜ。」
ああ、そういえば今回の出張捜査の前に、その様な事を言われた気がする。すっかり忘れていた。
師父にも見られるのだから、あまり無様な姿は晒せないな‥‥‥
その時、ある考えが頭を過ぎった(よぎった)。
「出し物って、モノマネでもいいんですか?」
先輩が驚いたように目を見開く。
「モノマネ?勿論構わないけど、そんなの出来たか?お前?」
「この間会った、ミツルギ検事のモノマネなんてウケませんかね?」
私のこの台詞を聞いた途端、先輩が大笑いを始めた。
周囲の同僚が一斉に、何事かとこちらを見る。
「あの赤くてヒラヒラな気障検事か!そりゃいい!間違いなく大ウケだぜ!」
自室の洗面所で、鏡を凝視する。
帰国後何かと忙しくて、理髪店へ行けなかったのが幸いした。
あの検事に比べて 若干短い感じはするが、似たような髪形にはなりそうだ。
ヤツの仕草を 出来る限り思い出すんだ。口癖や声色も。
ヤツに似た私を見た時、師父は一体どんな表情をするのだろう?
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